イギリス留学前に医療制度を完全理解|IHS・NHS・GP登録の手順と海外保険の選び方
イギリス留学を目前に控え、「現地で病気になったらどうしよう」「複雑な医療制度や保険の手続きが不安」といった悩みも出てくると思います。留学生活の成功は、健康面の安心も大切です。
ここでは、留学生(特に長期での留学)が必ず知っておくべきイギリスの公的医療制度NHSと、その利用を可能にするIHS(移民医療付加料)の支払い義務と最新料金、そして渡英後に必須となるGP(一般開業医)の登録手順までを、わかりやすく解説します。
また、NHSでカバーされない処方箋代や歯科・眼科治療費に備えるための海外保険の最適な選び方や、英語が不安な方でも安心して受診できるための具体的なサポート活用術もご紹介します。
イギリスの医療制度の基本理解
イギリス留学を検討している方が、現地での病気や怪我に対する不安を解消するためには、まず国の医療制度の全体像を正確に把握することが大切です。イギリスの公的医療制度であるNHS(National Health Service)と、留学生が支払うIHS(Immigration Health Surcharge)、さらに現地のプライベート医療がどのように機能し、どのような違いがあるのかを理解することで、安心して受診できる準備ができます。
このセクションでは、留学生が利用できる主な医療制度の概要と、NHSのサービス範囲を解説し、留学前の不安を取り除く一助にしてもらえればと思います。
イギリス留学中に利用できる主な医療制度(NHS・IHS・プライベート)
イギリス滞在中に利用可能な医療制度は、大きく分けて公的医療であるNHS、IHSという費用を支払い利用可能となる公的医療サービス、そして自由診療であるプライベート医療の3種類です。これらの制度の役割を理解することが、ご自身の状況に合わせて最適な受診先を選択するための基礎となります。
| 制度 | 概要 | 費用(留学生) | 利用のメリット |
|---|---|---|---|
| NHS | 国民保健サービスと呼ばれるイギリスの公的医療制度。長期滞在者に対して多くの医療サービスを無料で提供 | ビザ申請時にIHSを支払うことで、ほとんどのサービスが無料 | 経済的な負担が非常に少ない |
| IHS | Immigration Health Surcharge(移民医療付加料)。学生ビザなど6ヶ月を超える特定のビザ申請時に支払いが義務 | 年間£1,035(YMSの場合は、2年分£1,552)を滞在期間に応じて一括支払い | NHSの医療サービス利用が可能 |
| プライベート医療 | 全額自己負担となる自由診療の医療サービス。医療機関やサービス内容によって費用が異なる | 全額自己負担 | 待ち時間が短く、迅速な対応が期待できる |
これらの3つの制度の役割をそれぞれ理解しておけば、ご自身の状況に合わせて最適な受診先を選択するための基礎知識にもなってきます。
NHSで無料になる医療サービス一覧
IHSを支払ってNHSが利用可能になる留学生は、イギリス国民と同様に広範囲の医療サービスを無料で受けることが可能です。この無料サービスは、留学中の健康の不安を大きく軽減する要素にもなります。
NHSで無料で提供される主要な医療サービスは以下の通りです。
一般診療(GP診察)
風邪や軽度の病気など、初期診療を担う一般開業医(General Practitioner)による診察料が無料です。
救急医療
A&E(Accident and Emergency)と呼ばれる救急救命室での治療は、緊急性の有無に関わらず無料です。
専門医への紹介
GPの判断で専門医(例:皮膚科、消化器内科)への紹介状が出された場合の診察も無料対象です。
入院費用
手術や治療のための入院費、および関連する看護サービスが無料となります。
予防接種
公的に推奨されている予防接種の多くが無料で提供されます。
妊娠・出産関連
妊娠中のケア、出産、産後のケアサービスも無料で利用可能です。
これらのサービスが無料で提供されることにより、留学生は大きな経済的負担を心配することなく、安心して受診できます。
NHSでは無料にならない医療領域と自己負担の目安
NHSは非常に広範囲のサービスをカバーしますが、一部の領域では自己負担が発生します。この自己負担の目安を事前に把握しておくことは、留学中の医療費管理においてとても重要になってきます。
自己負担が発生する主な医療領域は以下の表の通りです。
| 領域 | 自己負担の対象となるもの | 自己負担の目安 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 処方箋 | GPが発行した処方薬の受け取り時 | 1品目あたり £9.90(2024年5月1日以降) | スコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは無料 |
| 歯科治療 | 治療のレベルに応じた定額負担 | £26.80(レベル1)~£319.10(レベル3) | 3段階の料金体系 |
| 眼科治療 | 眼鏡・コンタクトレンズの作成費用 | 全額自己負担 | 視力検査は無料 |
処方箋代や歯科・眼科治療費は自己負担となるため、これらの費用に備えて海外旅行保険の「治療・救援費用」の補償内容も確認しておくことが大切です。保険に加入する前にこれらの内容もしっかりチェックしておけば、突発的な費用の発生にも冷静に対応できます。
プライベート医療を利用する際の注意点と上手な使い分け
NHSの無料サービスは魅力的ですが、予約の取りにくさや専門医への待機期間が長くなるという課題が存在します。このため、プライベート医療との上手な使い分けを検討することが求められてきます。
プライベート医療は、全額自己負担であるものの、以下のような点でNHSと異なります。
待ち時間の短縮
GPや専門医の診察予約が比較的容易であり、待機期間も大幅に短縮できます。
専門性の選択
ご自身で専門医を指名し、セカンドオピニオンを得ることが容易です。
予約の柔軟性
NHSよりも柔軟な時間帯での予約が可能です。
注意点として、プライベート医療を利用した場合、海外旅行保険に加入していないと費用は全額自己負担となり、高額になる可能性があります。緊急性が高くないものの、迅速な対応が必要な場合や、NHSでは予約が取れない場合にプライベート医療を検討するのが賢明な使い方です。緊急時や専門治療を要する際には、プライベート医療のオプションも含めて考えることで、留学中の健康リスクを最小限に抑えられます。
NHSとIHSの違いをわかりやすく解説
イギリス留学を検討する際、多くの方が混同しやすいのがNHS(国民保健サービス)とIHS(移民医療付加料)の二つの制度です。これらは密接に関連してはいますが、それぞれの制度の役割は全く異なります。これらの制度を正確に理解しておけば、留学ビザの手続きと渡英後のGP登録もスムーズに進めていけるでしょう。
このセクションでは、IHSの支払い義務と計算方法、NHSの利用ができない具体的なケース、そして最も重要なGP登録の手順を、留学前に確認しておくべき点として分解説します。
IHS(移民医療付加料)とは?支払いと計算方法
IHS(Immigration Health Surcharge:移民医療付加料)とは、イギリスに6ヶ月を超えて滞在するビザ申請者が、滞在中にNHSのサービスを無料で利用できるようにするために義務付けられている付加料です。
IHSの支払いに関して、重要なポイントは以下の2点です。
定義と目的
IHSは長期ビザ申請者がNHSを利用するための料金であり、現地での治療費そのものではありません。この料金を支払うことで、NHSのほとんどのサービスを無料で利用できるようになります。
支払いタイミングと費用
学生ビザ(Student Visaなど)を申請する際に、オンラインで一括で支払う必要があります。料金は滞在期間に応じて計算され、学生の場合、年間£1,035(2025年時点の目安)の料金がかかります。YMSの場合は、2年間で£1,552必要となります。
IHSの支払い証明がないと、ビザ申請が完了しないため、費用を留学準備費用の重要な一部として考えておき、事前に留学予算の一部として用意しておくことが重要です。
NHSが使えないケースと対象外条件
IHSの支払いがNHSの利用を保証しますが、すべての留学生が対象となるわけではありません。NHSが使えないケース、すなわちIHSの支払い対象外となる条件を知っておくことは、代わりの医療準備を検討するために重要です。
NHSの無料利用の対象外となる主なケースは以下の通りです。
滞在期間6ヶ月未満
留学期間が6ヶ月未満の短期留学(Standard Visitor)で滞在する場合、IHSの支払いは不要ですが同時にNHSの医療サービスも利用できません。
観光目的での滞在
観光目的で入国した場合でも、6ヵ月未満の滞在となるためNHSの対象外です。
留学期間別の医療制度の対応は以下の通りです。
| 留学期間 | IHS支払い | NHSの利用 | 取るべき対応 |
|---|---|---|---|
| 6ヶ月以上 | 必要 | 可能 | 海外保険の加入は強く推奨 |
| 6ヶ月未満 | 不要 | 不可 | 必ず日本の海外旅行保険に加入 |
6ヶ月未満の滞在でNHSの医療サービスを受けられない方は、滞在中に発生する可能性のある医療費に備えて、必ず日本の海外旅行保険などに加入する必要があります。この保険は、現地で利用した医療費をカバーするための大切な備えとなります。
NHS申請で必要な書類と登録手順
IHSの支払いによりNHSが利用できる状態になった後、実際に現地で医療サービスを受けるためには、渡英後にGP(一般開業医)への登録手続きが必要です。GPへの登録手順を理解しておきましょう。
GP登録は、以下の手順で進めます。
ステップ①
ご自身の滞在先住所から通いやすいGP(診療所)を検索し、新規患者の受け入れを行っているかを確認します。GPは自宅の住所によって利用できる場所が決められていることが一般的です。
ステップ②
登録に必要な書類として、パスポートと、現地の住所が証明できる書類(例:賃貸契約書、大学からのレターなど)を用意します。
ステップ③
GPの受付窓口でGMS1フォームと呼ばれる登録申請書を受け取り、必要事項を記入して提出します。
ステップ④
登録手続き後、数週間でNHS番号が発行されるのを待ちます。この番号により、医療記録が管理され、NHSのサービスを正式に利用できるようになります。
この手続きは渡英後すぐに行うことをおすすめします。住所証明書の取得に時間がかかる場合もあるため、事前に学校やホームステイ先に必要な書類を確認しておくことがスムーズな登録に繋がります。
留学生のための医療費・保険の準備ガイド
イギリス留学中の医療費は、IHSの支払いによって負担が軽減されますが、「もしもの備え」として海外保険の加入は依然として重要です。公的医療制度がカバーしない範囲の医療費や、緊急時の医療搬送費用などは、予期せぬ大きな自己負担となる可能性があります。
このセクションでは、NHSと海外保険の補償範囲を比較し、留学生に最適な保険の選び方を解説します。さらに、緊急時の具体的な連絡先と対応方法も提示し、実務的に「安心できる準備」を完了させましょう。
留学生向け医療保険の選び方と日本の海外保険との比較
NHSを利用できる権利があっても、日本の海外旅行保険への加入が推奨されるのは、NHSがカバーしない領域や、緊急時の高額費用に備えるためです。海外保険は、NHSの弱点を補完し、留学生活を包括的に守るための「もしもの備え」としておくことが大切になってきます。
以下の比較表で、各制度の補償範囲の違いを明確に理解します。
| 補償項目 | NHS | 日本の海外旅行保険 |
|---|---|---|
| GP診察 | 無料 | 対象(保険適用) |
| 処方箋代 | 自己負担(定額) | 対象となる場合あり |
| 歯科/眼科治療 | 自己負担(定額/全額) | 対象となる特約あり |
| 医療搬送/救援者費用 | 対象外 | 対象(必須補償) |
| 携行品/賠償責任 | 対象外 | 対象(必須補償) |
留学生保険を選ぶ際の推奨基準は以下の通りです。
補償額
治療・救援費用の補償額は、万が一の事態に備えて無制限または高額であるものを選びましょう。
日本語対応
緊急時に英語でのコミュニケーションが不安な場合、24時間日本語でのサポートを受けられるサービスがついているか確認します。
歯科治療カバー
NHSの歯科治療は予約が難しく自己負担もあるため、歯科治療費用をカバーする特約を検討するとより安心できます。
実際にかかる医療費の目安と支払い方法
NHSの無料サービスがあるとはいえ、処方箋代などの自己負担や、緊急時の交通費など、実際にかかる費用を知っておくことは大切です。具体的な費用感を数値で把握しておくことで、留学中の予算を的確に管理できるようになってくるでしょう。
実際にかかる医療費の目安は以下の表の通りです(2024年時点の目安)。
| 項目 | 自己負担の目安 | 日本円換算(目安) | 支払い方法 |
|---|---|---|---|
| GP診察 | £0(無料) | 0円 | - |
| 処方箋(イングランド) | £9.90(定額) | 約2,000円 | 薬局窓口で支払い |
| 緊急搬送(救急車) | £0(無料) | 0円 | - |
| プライベートGP診察 | £50~£200 | 約10,000円~40,000円 | 病院窓口で支払い |
| NHS歯科治療(レベル3) | £319.10(最高額) | 約64,000円 | 病院窓口で支払い |
支払い方法としては、NHSの無料サービスは請求が来ませんが、自己負担が発生する処方箋や歯科、プライベート医療では、基本的に窓口でのクレジットカードまたはデビットカードによる支払いが一般的です。高額なプライベート医療を利用した場合、一時的に全額を立て替えた後、日本の海外保険に請求する形になることが多いため、手持ちの現金の準備と、保険金の請求手続きに必要な書類(診断書、領収書など)を保管しておくことが肝になります。
トラブル時の対応|病院の探し方と緊急時連絡先
体調不良や緊急事態が発生した場合、どこに、どのような連絡手段で連絡すべきかを事前に知っておくことが、迅速な対応には欠かせません。
- Q:体調が悪いときはどこに行けばいいですか?
- A:まず、GP(一般開業医)に予約を取りましょう。GPは風邪や胃腸炎など、日常的な体調不良の初期診療を担うかかりつけ医です。予約が取れない、またはGPの診察時間外の場合は、NHS 111(後述)に電話で相談できます。
- Q:緊急時はどの番号にかければいいですか?(999/111)
- A:症状に応じて、連絡すべき番号を使い分けます。
999(救急車・警察・消防)
生命の危険がある重篤な緊急事態(例:意識不明、胸の激しい痛み、大出血、重度の怪我)の場合にかけます。これは一刻を争う状況でのみ使用する番号です。
111(NHS 111)
緊急ではないが、医療的なアドバイスやサポートが必要な場合にかけます。GPの診察時間外や、どの医療機関に行くべきか判断に迷う場合に、専門のオペレーターからアドバイスを受けられます。
この使い分けを正確に理解しておくことで、緊急時にも適切な行動をとることが可能になります。
よくある質問(FAQ)
Q. NHS登録はいつまでに済ませればいいですか?
A. NHSにアクセスするためのGP登録は、渡英後すぐ(1週間以内)に済ませることがおすすめです。GP登録は、滞在先の住所が確定してから可能となるため、現地到着後に速やかに住居を決め、住所証明書を用意して手続きを始めましょう。
Q. IHS(移民医療付加料)はいつ支払うのですか?
A. IHSは、学生ビザやYMSなど6ヶ月を超える長期滞在ビザを申請する際に、オンラインで一括で支払いが必要です。IHSの支払いなしには、ビザ申請手続きを完了することができません。
Q. NHSカードのようなものは必要ですか?
A. NHS番号が発行されれば、日本のような保険証(カード)は不要です。診察を受ける際は、GPで発行された登録証明書やNHS番号、パスポートなどで本人確認が行われます。
Q. 医療英語が不安です。どうすればよいですか?
A. ロンドンなどの大都市であれば日本人が運営している日系のクリニックがあったりもします。プライベート診療にはなってしまいますが、どうしても英語が分からない伝えられないという事であれば、日系のクリニックを利用することも考えてみましょう。
まとめ
イギリス留学の成功は、学業だけでなく、健康面での安心も欠かせません。
ここの内容を通じて、イギリスの公的医療制度であるNHS、そしてそのサービスを利用させてくれるIHSについて理解が進められたかと思います。複雑に思えたIHSの支払いとGP登録の手順も、適切なステップを踏めば必ず完了できます。
イギリス留学の無料相談はこちらから 【留学スクエア公式LINE】

































































































































