イギリス留学の保険を徹底比較!IHS・NHSと海外保険の違い、最適な選び方
イギリス留学を控えている方を悩ますものの一つに、「保険の必要性」と「どの制度を利用すべきか」という問題があります。イギリスは、国民保健サービス(National Health Service、以下NHS)という公的な医療制度を有していますが、外国人留学生が利用できる範囲は日本の常識とは大きく異なります。
本記事では、イギリス留学で「知らないと損」をしないために、現地の「医療費」事情、NHSやIHSの仕組み、そして民間の海外保険の役割を徹底的に比較します。最後まで内容をご確認いただくことで、煩雑な保険の悩みを解消し、安心して留学準備を進めることができます。
イギリス留学で保険は必要?まず押さえるべき3つの制度
留学生がイギリスで病気や怪我をした際に利用できる主な制度は、現地の国民保健サービス(NHS)、ビザ申請時に支払う移民医療付加料金(IHS)、そして民間の海外留学保険の3つです。
これら三つの制度は、それぞれ「医療費」の対象者や利用範囲、そして留学ビザとの関連性が異なっています。これらの違いを明確に把握することが「安心」して留学生活を送るための第一歩となるでしょう。
まずこれら3つの制度の基本を解説し、全体的な制度体系をみていきます。
イギリスの医療制度(NHS)の基本と外国人留学生の扱い
NHS(National Health Service:国民保健サービス)とは、イギリスの国が運営する公的な医療制度です。この制度の目的は、イギリス国民に対して税金をもとに無料で医療を提供することにあり、世界最大級の公的医療サービスとして知られています。
外国人留学生がNHSを利用できるかどうかは、主に滞在ビザの種類とIHS(移民医療付加料金)の支払い状況によって決まる重要なポイントです。IHSの支払いが求められる留学生や、6ヶ月以上の長期滞在者、ワーキングホリデー(YMS)の対象者など、特定の条件を満たす場合は、基本的にNHSを国民と同じように利用範囲内で利用することが可能です。
利用できる範囲としては、一般開業医(GP)による診察、病院での緊急治療(A&E)、救急車サービスなどは原則無料で受けられます。しかし、NHSのサービスであっても、歯科治療や眼科治療の大部分、そして処方薬(イングランドの場合)などは有料となることが多いのです。特に、緊急性の低い病気の場合、最初にGP登録が必要であり、登録なしには一般の診察を受けられないことが多い点に注意が必要です。GP登録は、留学生活を始める上で早めに行っておくべき重要な手続きとなります。
IHS(Immigration Health Surcharge)とは?支払いの仕組みとメリット
IHS(Immigration Health Surcharge:移民医療付加料金)とは、特定のビザ(6ヶ月以上滞在する学生ビザなど)を申請する外国人に対して、イギリス政府が義務付けている手数料です。IHSは、ビザ申請時に滞在期間分を一括で支払うものであり、年間£776(2024年時点の一例)程度の費用がかかります。
IHSを支払うことによる最大のメリットは、イギリス滞在中にNHSを国民と同じように利用範囲内で利用する権利を得られることです。これは、IHSが民間の保険ではなく、「イギリス国内の公的医療サービスへのアクセス権手数料」であると理解すると分かりやすいでしょう。
しかしながら、IHSを支払っても、すべての医療サービスが無料になるわけではありません。無料になるのは、主にGPによる診察や緊急時の治療などNHSのコアサービスであり、前述した歯科治療や眼科治療、処方薬など、一部のサービスは引き続き有料です。また、IHSは病気や怪我の治療費のみをNHSの範囲内でカバーするものであり、盗難や航空機の遅延、緊急帰国費用など、留学生活で起こり得る非医療的なリスクには一切対応していない点を理解しておく必要があります。
民間の海外留学保険とは?カバー範囲と日本での加入方法
民間の海外留学保険は、NHSやIHSでは対象外となるものを補完し、留学生に真の「安心」を提供するためのものです。NHSがカバーしない「有料」とされる医療費用の自己負担分を賄うことに加え、最も重要なのは非医療的なリスクをカバーする点にあります。
民間の保険の役割は、主に以下の補償内容をカバーすることです。
疾病・傷害治療費用
NHSで有料とされる部分や、万が一プライベート診療を受けた際の高額な医療費をカバーします。
賠償責任
留学中に他人に怪我を負わせた、誤ってものを壊したなどの場合に発生する損害費用を補償します。
携行品損害
スマートフォン、パソコン、貴重品、スーツケースなどの盗難や破損に対する費用を補償します。
救援者費用
大事故や重病で家族が現地に駆けつける際の渡航費や滞在費用をカバーします。
これらの補償内容は、IHSやNHSでは一切カバーされないものです。したがって、留学前に日本国内で民間の海外保険に加入することが、高額な医療費リスクや留学生活で起こり得るその他の金銭的リスクから身を守る唯一の方法と言えます。加入時には、滞在期間や留学目的を保険会社に正確に伝え、必要な補償範囲を過不足なく確保することが重要となってきます。
【比較表】NHS・IHS・民間保険の違いまとめ
| 項目 | NHS(国民保健サービス) | IHS(移民医療付加料金) | 民間の海外留学保険 |
|---|---|---|---|
| 定義 | イギリスの公的医療システム | NHSへのアクセス権手数料 | 非医療リスク含む総合補償 |
| 費用 | 原則無料(税金で賄われる) | ビザ申請時に一括支払い(年間約£776例) | 保険会社へ支払う保険料 |
| 利用範囲(医療) | GP登録後の診察、緊急治療(A&E)など | IHS支払い者はNHSを利用範囲内で利用可能 | NHS対象外の医療費用、プライベート診療もカバー |
| 非医療リスク | 対象外 | 対象外 | 対象(盗難、賠償、救援者費用など) |
| 加入方法 | GP登録が必要 | ビザ申請時に自動的に支払い | 日本の保険会社で契約 |
| 対象者の例 | IHS支払い者、ワーホリ、ビザ保有者 | 6ヶ月を超えるビザ申請者 | すべての留学生(短期含む) |
自分に合った保険を選ぶための判断ポイント(滞在期間・目的別)
自分に合った保険を選ぶためには、滞在期間と留学目的を基準に補償ニーズを整理することが肝要です。
滞在期間で選ぶ(短期/長期)
短期滞在(6ヶ月未満)
IHSの支払い義務がなく、NHSの無料サービスも基本的に受けられません。万が一の病気や事故に備え、プライベート診療や高額な医療費をカバーできる民間の海外保険への加入が必須です。費用は抑えられますが、最低限の治療費用と携行品補償は手厚くすべきです。
長期滞在(6ヶ月以上)
IHSの支払い義務が発生するためNHSのコアサービスは利用できます。しかし、プライベート診療の選択肢や非医療的なリスクに備えるために、IHSではカバーされない高額な医療費を補償する民間の保険が強く推奨されます。長期滞在では、盗難や事故に遭遇するリスクが短期に比べて高くなるため、携行品や賠償責任の補償範囲を充実させることが推奨されます。
滞在目的で選ぶ(語学・進学・ワーホリ)
語学留学・進学留学
屋内の活動が中心になるため、慣れない環境でのストレスや体調不良のリスクが高まります。「疾病治療費用」の手厚い補償範囲が特に重要となります。
ワーホリ(ワーキングホリデー)
仕事や旅行など、活動範囲が広がり、アルバイト中の事故や怪我のリスクが高まります。このため、「傷害治療費用」や「賠償責任」の補償範囲をしっかりと確保することが必須です。また、荷物の移動も多くなるため、「携行品損害」も充実させた方が良いです。
予算と補償範囲のバランスで選ぶ
保険選びは、予算(保険料)と「補償範囲」のバランスが最も重要です。
予算重視の場合
携行品損害や航空機遅延など、他のクレジットカード付帯保険などでカバーできるものを補償対象から外すことを検討します。ただし、「疾病・傷害治療費用」の上限は、イギリスの医療費を考慮して、最低でも数千万円程度の高額な設定を維持する必要があります。
補償範囲重視の場合
プライベート診療の費用が全額補償されるプランや、歯科治療、眼科治療などNHSでは有料となるものまでカバーする特約を付加します。万全の「安心」を求める方には、保険料が高くなっても、すべてのリスクに備えたプランが推奨されます。
NHSを賢く活用するための基礎知識
NHSで受けられる医療サービスと注意点
NHSでは、留学生もGP登録を済ませれば、一般開業医による診察や病院の緊急外来(A&E:Accident and Emergency)といった無料サービスを受けることができます。特に、GP登録は、日本でいう「かかりつけ医」を持つことにあたり、緊急時以外のほとんどの病気や体調不良の最初の窓口となります。
注意点として、NHSは原則無料ですが、一部のサービスは有料となります。例えば、イングランドでは処方される処方薬(Prescription)に定額費用がかかるほか、歯科治療や眼科治療は治療内容によって高額な医療費となることが多いのです。
また、NHSは慢性的な人手不足や需要の高さから、GPの予約や専門医への紹介に長い「待ち時間」が発生することがあります。緊急性の低い症状の場合、数週間待ちとなることも珍しくないため、すぐに診てもらいたい場合に備えて、プライベート診療もカバーできる民間の海外保険の必要性が高まるでしょう。
スコットランドなど地域ごとの違い
イギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの構成国から成り立っており、NHSの制度は地域によって微差があります。特に知っておくべきものは、処方薬の費用に関する違いです。
イングランド
処方薬には定額費用が発生します。
スコットランド、ウェールズ、北アイルランド
処方薬は原則無料です。
留学先の地域によって、日々の小さな費用負担が変わるため、この違いを事前に把握しておくことは「無駄なく」NHSを活用する上で重要となります。
IHSとNHSの違いを理解するポイント
IHSとNHSはしばしば混同されがちですが、その性質は根本的に異なります。IHSはNHSを利用範囲内で利用するための「手数料」であり、NHSはGP登録後の実際の「無料サービス」を提供するものです。
IHS支払いで得られる権利と制限
IHS(Immigration Health Surcharge)を支払うことで留学生が得られる権利とは、特定のビザの滞在期間中、イギリスの公的医療システムであるNHSを国民と同じように利用範囲内で利用できることです。
しかし、「IHS=保険加入」ではないという点を明確に理解する必要があります。IHSはあくまでNHSという無料サービスへのアクセス権であり、民間保険のような包括的な「補償範囲」は提供していません。緊急時にプライベート診療を選択した場合、その費用は全額自己負担となります。この自己負担リスクに備えるのが、民間の海外保険の主要な役割となるのです。
留学生が誤解しやすいポイント
留学生がIHSと海外保険に関して最も誤解しやすいポイントは、「IHSさえ払えば海外保険は不要だ」という認識です。IHSは医療費用が無料になるNHSという医療サービスへのアクセスを保証するものですが、医療とは直接関係ない以下の損害はIHSやNHSでは一切カバーされません。
- 携行品の盗難や破損(パソコン、スマートフォン、貴重品など)
- 賠償責任(アパートやホームステイ先で誤ってものを壊した際の損害費用)
- 救援者費用(重篤な病気や怪我で家族が現地に駆けつけるための渡航費用)
- 緊急帰国費用(本人の体調悪化や家族の事情で予定より早く帰国せざるを得なくなった場合の費用)
これらの損害リスクに対する補償範囲をカバーしてく事こそが、民間の海外保険の最も重要な役割とも言えます。
海外留学保険を選ぶときのチェックリスト
加入するべき補償内容(疾病・事故・賠償・携行品など)
保険プランを選ぶ際は、まず以下の主要な補償内容の「補償範囲と費用上限」を確認することが大切です。
「疾病・傷害治療費用」と「賠償責任」は、自己負担額が青天井になり得るリスクであるため、手厚い補償範囲を選択することが、最大の「安心」へとつながります。
保険料の目安と費用比較
海外留学保険の保険料は、滞在期間、補償範囲、そして加入する保険会社によって大きく変動します。
短期(1ヶ月程度)
補償範囲にもよりますが、約3万円〜7万円程度が目安です。
長期(1年間)
補償範囲にもよりますが、約20万円〜40万円程度が目安となります。
保険料を比較する際には、以下の点に注意することで、「無駄なく」最適なプランを選ぶようになります。
自動付帯のクレジットカード保険との比較
不足分のみをカバーするプランを探しましょう。
保険会社の比較
緊急時の日本語サポート体制や、プライベート診療の特約があるかなど、サービス品質も総合的に比較することが重要です。
まとめ|「転ばぬ先の杖」イギリス留学前に保険を整えて安心を
イギリス留学における保険の選択は、単なる手続きではなく、「転ばぬ先の杖」として留学生活全体の「安心」を担保していくための判断でもあります。
しかし、最適な保険プランは、滞在期間、留学目的、そして予算によって一つひとつ異なります。インターネット上の情報だけでは、正確な保険料や補償範囲の詳細を把握することは難しいかもしれません。
そのため、まずは保険会社に相談することから始めてみましょう。
イギリス留学の無料相談はこちらから 【留学スクエア公式LINE】
よくある質問(FAQ)
ここでは、イギリス留学の保険に関するややこしい疑問を解消します。
Q. NHSとIHSの違いは?
A. NHSはイギリスの公的医療システムそのものであり、GP登録後の診察などの無料サービスを提供します。一方、IHSは、6ヶ月を超える滞在期間のビザ申請者がNHSを利用範囲内で利用する権利を得るための「手数料」です。IHSを支払うことでNHSは利用可能になりますが、NHS自体は民間の保険のような包括的な補償範囲をカバーしていません。
Q. 日本の保険証は使える?
A. 日本の健康保険証や国民健康保険は、イギリス国内の医療費には原則使えません。海外旅行傷害保険の付帯したクレジットカードを持っている場合でも、補償範囲や費用上限が不十分なケースが多いため、滞在期間全体をカバーできる民間の海外保険に別途加入することが強く推奨されます。
Q. 短期留学でも保険は必要?
A. はい、必要です。数週間程度の短期留学の場合、IHSの支払い義務はありませんが、NHSの無料サービスも基本的に受けられません。万が一の病気や怪我でプライベート診療を受けることになると、高額な医療費(一例:数日間入院で約200万円)を全額自己負担しなければならないリスクがあるため、民間の海外保険は必須です。
Q. 保険加入のタイミングは?
A. 民間の海外保険は、出発の2〜3ヶ月前には比較検討を始め、遅くとも出発の1ヶ月前には加入手続きを完了させることをおすすめします。特に長期滞在の場合、ビザ申請時に保険加入を求められるケースもあるため、余裕を持って準備することが重要です。



































































































































